僕らの周りの環境は、知らないうち少しずつ変化している。
静かだった住宅地が開発されて大きなビルが建ったり、野原が住宅地に変わったりする。
それは、自然界でも同じだ。
今では、交通網や通信の発展により海外との行き来が、とても盛んになっている。
皆さんの中にも海外旅行を経験した人がいるだろう。
そうして、何かのきっかけで海外からの生物が入り込み、
日本の風景に溶け込んでしまうことがある。
10月活動で見た野外の風景は、僕らには見慣れた景色で、大きな違和感はなかっただろう。
だけど、実際には人の活動とともに海外から入ってきて、
日本の自然に溶け込んでしまった植物があった。
こうした海外から入って住み着いた植物を帰化植物1)というが、
皆さんはそれに気付いただろうか。
秋の野原で帰化植物の代表といえば、なんといってもセイタカアワダチソウ(図1)だ。
写真をみれば誰もが『ああ、この草』と納得するほどよく見かける植物で、
“泉の森”の池のまわりに密生していた。
セイタカアワダチソウは2,3)、もともとは北アメリカが原産で観賞用に輸入された。
今ではどこにでもある植物だが、背が高く、黄色い花をつける姿がもの珍しくて輸入されたのだろうか?
地下部から他の植物の発育をさまたげる物質を分泌するため、他の植物を寄せ付けず、
有利に繁殖できる。
増えすぎると、自らが分泌する物質で中毒になり、自分自身を枯らしてしまう。
1株が、数万の種を作るため、あっという間にひろがり、
今ではすっかり日本の秋の風景に溶け込んでいる。
もう一つはアレチウリ(図2)だ2-4)。
アレチウリは引地川の堤防に生えていた。この植物も北アメリカ原産。
1952年に静岡県清水港で採集された。
種が輸入大豆に混入し、それを使う豆腐屋を中心に広がったといわれている。
アレチウリは、巻きヒゲを出して他の植物にからみつき、覆いかぶさって他の植物を荒らす。
10月活動の翌週のテレビニュースでも、アレチウリの被害が取り上げられていた。
アメリカでのトウモロコシが荒らされている映像が流れ、日本での被害が心配されていた。
帰化植物は外部から入って来ているから、繁殖を妨げる生物や植物がいない。
例えば、イネはバッタやウンカなどの昆虫、鳥などに食べられてしまうが、
帰化植物にはこうした敵がいない。
その上、セイタカアワダチソウの地下からの分泌物質やアレチウリの巻きヒゲのような武器があれば、
日本の野草を駆逐してあっという間に広がる。
これからも人や物が海外と日本を行き来する機会は増えるだろうから、
帰化植物は増えて知らないうちに周りの景色を変えていくだろう。
僕らには、そうした状況に気付く観察力が必要だ。
(終り)
- 参考文献
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