このレポートは、かたつむりNo.312[2008(平成20)04.20]に掲載されました

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寒さに負けるな!冬の空には星が輝いている(3)
− 冬の星とギリシャ神話 −
運営委員 高 木 茂 行
 
図1 冬の星
■図1 冬の星
図2 ギリシャ神話の神々と英雄
■図2 ギリシャ神話の神々と英雄
図3 オリオン座とおうし座
■図3 オリオン座とおうし座
図4 ふたご座
■図4 ふたご座
図5 ふたご座(ポルックスとカストル)
■図5 ふたご座(ポルックスとカストル)
 前回のかたつむりで冬の星について書いたけど、皆さんは実際に星を見ただろうか? 今回は冬の星座とギリシャ神話について紹介する。その前に前回の復習も兼ねて冬の星座の説明をする。
 図1で三つ星とそれを取り囲む5つの星がオリオン座で、ベテルギウス、プロキオン、シリウスが冬の三角形1)。 そして、オリオン座の右上にある明るく赤っぽい星がアルデバラン。 オリオン座の左上、プロキオンの上には2つの明るい星が並んでいて、下側の赤っぽい星がポルックス、上側の白い星がカストルだ。 冬の星座はこれらの明るい星を中心に作られ、アルデバランはおうし座、ポルックスとカストルはふたご座、 シリウスはおおいぬ座となっている1)
 ギリシャ神話を理解するため、主要な神々と英雄を図2にまとめた。 ギリシャ神話では、ゼウスが天と地上(天界)を支配する最高神、ポセイドンが海を支配する神となっている2)。 まず、ゼウスの話を紹介しよう。ゼウスはある日大きな牛に化け、 海近くの牧場で摘み草をしているフェニキアの女王エウロパの前に現れた。 おとなしい姿にエウロパが心を許して牛に乗ると、牛は海に走り込みそのまま海を泳いでいった。 到着したのはギリシャの海岸で、そこでエウロパはゼウスの妻となった。 この大きな牛が図3のおうし座で、エウロパ女王の名前はヨーロッパの語源になったと言われている3),4),5)
 次にふたご座。 ゼウスは、エウロパの他にもスパルタの王妃レダやレトなど多くの女性と結婚し、地上の物、英雄、社会の仕組みを作っていった。 ポルックスとカストルは、レダが生んだ卵からかえった双子の兄弟。二人はいとこのイダス、リンケウスとともに牛の群れをとりに行った。 ところがいとこ達に裏切られて牛の群れを横取りされ、カストロはこれを奪い返すためイダスと戦い、殺された。 それを知ったポルックスはリンケウスを殺して仇をうち、イダスはゼウスが放った雷電で殺された。 ゼウスは、ポルックスの願いを受け入れて二人をあの世で一緒に暮らせるようにし、友愛のしるしとして双子の姿を星空に現した。 これが図4、図5のふたご座。 きれいに二つ並ぶ星に、ギリシャの人々は友愛に包まれた双子をイメージしたのだろう3),4),5)
 そして最期に紹介するのはオリオン。オリオンは海の神ポセイドンを父に、女人国アマゾンの女王エウリュアーレを母に持つ勇敢な狩人。 月と狩りの女神アルテミスに仕え、女神に愛された。 兄のアポロンはそれが気に入らず、海を歩くオリオンに金色の光をあびせ、光っているものを撃つよう女神を挑発した。 これにのせられた女神が矢を放つと金色の光に当たり、後には岸辺にオリオンが打ち上げられた。 女神はひどく悲しみ、ゼウスに願って星空にあげてもらった。これが図3のオリオン座だ。 そして、その横に横たわるおおいぬ座は(図6)、オリオンが狩りにつれていた犬と言われている。
冬の星座にまつわるギリシャ神話をざっと紹介した。 ゼウスが化けた牛、勇敢なオリオンと彼の犬、友愛に包まれたカストルとポルックスを想像しながら夜空を眺めると、 遠い存在だった星が身近なものに思えてくる3),4),5)
 だから、星を見るのに外は寒いなどと言っていてはいけない。 雪が降った2月活動の日、小野顧問と高木運営委員は、降りしきる雪の中、藤ヶ岡中学校の校門に立っていた。 団員に2月活動の中止を告げ、入団を希望する方を校舎に案内するためだった。 高木運営委員は一時その場を離れたが、小野顧問は1時間以上も外に立ったままだった。 あの寒さに比べれば、三十分ほど外に出て星を見てもたいしたことは無い。
図6 オリオン座とおおいぬ座
■図6 オリオン座とおおいぬ座
さっそく今晩、ギリシャ神話を想い出しながら星を眺めてみよう。
(終わり)

1)藤井 旭:ヤマケイポケットガイド 星座・星雲,山と渓谷社,158〜169 (2000)
2)世界大百科事典:平凡社,7巻,470〜473 (1992)
3)阿刀田 高:私のギリシャ神話,日本放送出版協会 (2000)
4)野尻 抱影:星の神話・伝説,株式会社講談社 (1991)
5)藤井 旭:星座大全 冬の星座,株式会社作品社 (2003)

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