2006年のかたつむりに同じタイトルの記事を3回にわたって書いた。今回はその続編。
山好きの作家 深田久弥(キュウヤ)氏が日本全国の山から100の山を選定したのが「日本百名山」。
2005年には6年生の大倉由衣(ユエ)さんが小学生で初めて百名山踏破を達成し、テレビや新聞に取り上げられた。
高木運営委員もこれに刺激されて百名山を目指し、現在60座に達したところ。
日本百名山は北海道、本州、四国、九州にわたっている。
これらの中でも北海道の山はスケールが大きく、大自然が息づいている。
今回はそんな北海道の山としてトムラウシ山を紹介する。
トムラウシ山の名前の由来は、トムラウシ川からきたもので、『トンラウシ』と呼ぶのが正しい。
アイヌ語で『トンラ』は水垢(ミズアカ)を示し、『ウシ』は多いを示している。
トンラウシ川は『水垢の多い川』を意味している。
温泉の鉱物で水がぬるぬるしているがこの名前の由来1)。
北海道の真ん中、大雪山系のほぼ中央に位置し、図1のように頂上には3つのピークが並び、どこから見ても分かる山だ。
この山には3つの特徴がある。構造土、永久凍土、高山植物や動物などの生き物。
構造土は地面が凍ったり溶けたりして自然にできた土の模様である。図2はトムラウシ山に連なる白雲岳の火口の写真。
図の右下には石がスジ状に並んでいるのが見える。これを拡大したのが図3で、石(礫)の模様がよく見える。
地面にこうした模様ができるが構造土だ。
構造土は、図4のようにできたと考えられている2−4)。
このあたりは冬には極寒の地となるが、積雪量が少なく風が強いため雪がとばされてしまう。
地表はむき出しになったり、わずかに雪が積もったりして凍結する。
そして、夏には太陽の光を受けて溶ける。これを繰り返すことで地面が引っぱられ(a)のように亀裂ができる。
礫は雨で流されたり風で押されたりして、(b)のように次第に溝に落ちる。
さらには、凍結により地面が盛り上がり、ほとんどの礫は(c)のように溝に落ち、地面に模様ができる。
この厳しい冬の寒さと雪の積もらない条件が、さらには永久凍土を作り出している2−4)。
冬には雪がないことで地面は猛烈に冷やされ、土は奥深くまで凍る。
大雪山系の夏は短く表層の氷は溶けてしまうが、地面の奥は夏に溶けることなく次の冬を迎える。
こうして、一年じゅう氷が溶けない永久凍土が作られる。
日本ではこのトムラウシ山の付近と富士山のみで観察されている。
ロシア発見でされるマンモスも、これと同じ永久凍土の中に埋まって保存されている。
この山を歩いていると図5のキタキツネ、リスなどの野生動物に出会う。
また、山の頂上近くの岩場には氷河時代から生き残ったといわれるナキウサギが住んでいる2)。
ハムスタやネズミを一回り大きくしたような姿で、岩場からときおり顔をのぞかせるが、
動きが速く写真に撮るころはできなかった。さらには、可憐に咲く高山植物が目を楽しませてくる。
図6はトムラウシ山近くの天沼に咲くイワウメである。
トムラウシ山の近くにはいくつかの沼があり、図7のように沼越しに大雪山系が見ることができる。
点在する沼、岩に咲き乱れるイワウメや高山植物の群生、ごつごつした岩、地面にできた模様、遠くに見える大雪の山々。
その景観はまさに地上の楽園で、日本庭園と呼ばれている5)。
皆さんも北海道に行く機会があったら、ドライブや散策だけでなく、ロープウェイで旭岳に登って大雪山を歩たり、
トムラウシ温泉からトムラウシ登山に挑戦して欲しい。雄大な自然が感動を与えてくれる。(つづく)
|