小学生には負けられない。目指せ、日本百名山(7) | ||||||||||||||||||
− 今の噴煙を上げ続ける火山 − | ||||||||||||||||||
運営委員 高 木 茂 行 | ||||||||||||||||||
火山の分布を考えるためには、地球内部の構造を知る必要がある。 図2のように地球の内部にはマントルと呼ばれる熱くドロドロした物質があり、表面だけが冷えて固まっている。 この表面は全世界で十数枚のプレートと呼ばれる大きな板に分かれていている2),3)。 分かりやくするため、冬の水たまりに張った氷を想像して欲しい。 下の水がマントルで表面の氷がプレートで、その氷が10枚ぐらいに割れていると考えればよい。 また、プレートは陸と海の2種類があり、陸を形成しているのが大陸プレートで、海を形成しているのが海洋プレートである。 大陸プレートはマントルの上に浮かんでいて、我々はその上で日々の生活を続けている。 一方、海洋プレートは一番下からマントル、海洋プレート、その上に海水という構造になっている。 ところで、このプレートは海洋プレートの方が大陸プレートより重い。 2つがかさなり合うところでは、図2のように海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み、 海溝と呼ばれる海の深い部分を作り出している3),4)。 そして、海溝から200〜300km離れたところ(火山前線)からマグマがあがり火山は形成されている。 図3を見ながら日本の場合で調べてみよう5)。 北海道から中部地方の太平洋側(東側)では、海洋プレートが大陸プレートに沈み込み、 日本海溝と伊豆・小笠原海溝が形成されている。 そしてこれに沿うように東日本火山帯の火山前線がある。図3のABでの断面が図2の断面ABに対応している。 同じように、中国から九州の太平洋側では、海洋プレートが大陸プレートに沈み込み、 南海トラフと南西諸島海溝を形成している。これに沿っているのが西日本火山帯である。 南海トラフのトラフと言うのは基本的には海溝と同じで、その深さが6000m未満と浅いもののこと3)。 地球の内部構造を理解できれば、日本の火山の分布も分かるだろう。 近畿や四国に火山が無いのは、この地域が海洋プレートの沈込み(海溝、トラフ)と火山前線の間に挟まれているからだ。 さて、火山についてざっと説明したところで、百名山の中で噴煙の見られる山を北海道から紹介する6),7)。 図3で@は羅臼岳から見た知床連山。羅臼岳は知床連山の最高峰で、中央の奥で噴煙を上げているのが硫黄山。 Aは北海道の中央に連なる大雪山系の旭岳である。 ふもとの旭岳ロープウェイに乗れば、噴煙を上げる地獄谷に1時間ほどで到着でき、噴煙の量に圧倒される。 Bは全国的にもよく知られている那須岳。写真ではわかりづらいが、右側からは黄色いガスが上がっている。 Cは北アルプスの中で噴煙を上げ続ける御嶽。1979年に有史以来で初めての噴火を記録し、今も山頂直下から噴煙が上がっている。 次に西日本火山帯に含まれる山々。Dは九重山の中で噴煙を上げている硫黄山(手前の左側)。 そして、Eは阿蘇山にある高岳を仙酔峡から見た写真。右下のコンクリートブロックは噴火した時に避難するための場所である。 こんな物を見ると何時噴火してもおかしくないと、山頂を目指すことに躊躇してしまう。 さて、火山について少し危ないイメージを与えたかもしれないが、火山の近くには豊富な温泉が湧き、多くの旅行者を引き付けている。 図6の那須岳のように、有名な温泉地には有名な火山ありである。 昨年の夏、日本百名山を目指し、北海道の利尻岳、斜里岳、図4の羅臼岳に登った。 羅臼岳の登山口には岩尾別温泉があり、湧き出す温泉が露天風呂として無料で開放されていた。 羅臼岳の登山には9時間以上もかかったが、下山して何人もの登山者と一緒に温泉で汗を流した時の爽快感は今でも忘れられない。(終わり)
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