錦織選手の活躍にホレボレ! テニスで学ぶ力と運動の科学(2) |
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− ストロークによるボールの等速運動 − | ||||||||
運営委員 高 木 茂 行 | ||||||||
ここで、ボールを1回バウンドさせて打ち返すストローク(図3、4)について考える。 ストロークでラケットから離れたボールは、しばらくは同じような動きをするだろう。 ラケットから離れた直後とネットの手前ぐらいまでは、同じ方向に同じように飛んでいく。 しかしながら、ボールは次第に遅くって下に向かって飛ぶようになり、コートに落ちでバウンドする。 次第に遅くなるのは空気の影響を受けるからで、下に向かうのは重力の影響を受けるからだ。 重力というのは地球上の物が地球に引っ張られる力で、すべての物は低いところに向かって落ちる。 もし、空気と重力がなければ、ボールは同じように飛びつづけるだろう。 ここまでの説明で“同じように”と言ってきたが、科学の世界ではこれを等速運動と呼ぶ2),3)。 速度とは移動した距離を移動した時間で割ったもので、移動の速さを表す量である。 等速運動というのは一定の速度で移動すること。速度を式で書くと次のようになる。 速度=移動した距離÷移動にかかった時間
簡単な例で考えてみよう。
3人兄弟が科学少年団の活動に参加するため、自宅から4km離れた藤ヶ岡中学に行くことになった。
長男(A)はバスで15分(0.25時間)、次男(E)は自転車で30分(0.5時間)、三男は歩いて60分(1時間)かかった。
それぞれの速度は、(A)は4km÷0.25時間=16km/時間、(B)は4km÷0.5分=8km/時間、
(C)は4km÷1時間=4km/時間となる。km/時間が速度の単位だ。
速度に直すと、バスは歩きより4倍、自転車は歩きより2倍速いことが分かる。さて、テニスの話に戻ると、ストロークでのボールの速度は一般の人の場合、80km/時程度で、市街地を走る車より速い。 この速いボールを捕らえて相手のコートに返すのだから、素早い判断と動きが必要だ。 そこで考えるのは、ボールの速度はラケットから離れるとともに少しずつ遅くなるが、大部分は等速運動であること。 相手がボールを打った瞬間に『等速運動』を頭に浮かべて動きを予測し、自分が打ちやすい位置に移動すればよい。 単純に練習するよりは、上達が早まるだろう。 さて、次回はテニスの中でも速度の速いサービスでエネルギーについて考える。(つづく)
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