錦織選手の活躍にホレボレ! テニスで学ぶ力と運動の科学(3) |
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−サービスされたボールのエネルギー− | ||||||||
運営委員 高 木 茂 行 | ||||||||
サービスで打たれたボールで仕事とエネルギーについて考えよう。まずは仕事について。 仕事というと大人が会社に行くこと思い出すかもしれないが、科学でいう仕事は少し違って、 あるものに力を加えて力の方向に動かすことを言う。仕事は次の式で求められる1)。 仕事(ジュール) = 力(ニュートン)×力の向きの移動距離(m) (1)
次に、科学では仕事ができる能力を持っていることを、エネルギーを持っていると言う。 図3でスポンジの上に置かれた箱に、電池を落とすと箱はスポンジの中に入り込む。 すなわち、持ち上げられた電池は箱を移動させるエネルギー持っている。 同様にサービスされたボールも箱に当たって箱をスポンジの中に動かせるので、エネルギーを持っている。 ボールが持っているエネルギーは、次の式で計算できる3)。 ボールのエネルギー(J) = 0.5×重さ(kg)×速度(m/s)×速度(m/s) (2)
エネルギーのことを頭に入れて、サービスについて改めて考えてみる。テニスをやる人なら誰でも早いサービスを打ちたいと考える。 (2)のエネルギーの式では、速度が2回かけ算していることに注目して欲しい。 サービス練習を重ねてボールの速度が、プロ並みの時速約60m/s(時速200km/m)になったとする。同じようにエネルギーを計算すると、 0.5×0.05kg×60m/s×60m/s=90Jとなる。速度が2倍になると2倍×2倍で4倍になる。 少しでもボールの速度が大きくなれば、その効果は速度×速度で急激に大きくなる。 練習量を増やし、少しでも早いサービスが打てるようになることの重要性が実感できる。 さて、3回にわたってテニスと力、運動、エネルギーについて説明してきた。 これは、野球、サッカー、バスケットボールなど他の球技でも同じだ。 科学のことを考えながら練習すれば、きっと上達は早くなるだろう。 (終わり)
*正確には100gの電池を持ち上げる力は0.98N,
**正確には1kgの物を持ち上げる力は9.8N
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