地球の大きさを計る(1) | |||||||||||||
−紀元前230年 アレクサンドリアにて− | |||||||||||||
運営委員 高 木 茂 行 | |||||||||||||
地球の大きさが測られたのは紀元前230年だった。 西暦ではキリストが生まれた年を0年とし、それ以前を紀元前で表すから今から約2240年前のことだ。 測定を行ったのはアフリカの町キュレネ(現在のクオーネ)で生まれたエラストテネス2)。 計測が行われた場所はアレクサンドリアだった(図1)。この頃は、ギリシャの文明がヨーロッパからアフリカに広がっていた。 それらの都市の中でもっとも栄えたのがアレクサンドリアで、ギリシャ文明の知識を集大成した図書館が作られていた。 エラストテネスは才能を認められ、この図書館の館長となっていた。 そんなエラストテネスは、『シエネ(現在のアスワン)の町では、夏至の日に井戸にはまっすぐ陽が差す』ことを文献で知り、 地球の大きさが分かると喜んだという3),4)。彼は次のことを知っていた。
これだけのことで地球の計り方が思いつく団員は、将来に科学者として大成することだろう。 エラストテネスは、同じ夏至の日にアレクサンドリアで、棒が作る影から太陽の角度を調べた。 図2のように棒に太陽が当たると影ができる、これを調べたのである。 実際に計ってみると短い影ができ、太陽は垂直から7.2度傾いていた。 一方、シエネの町では井戸にまっすぐ陽が指すので影はできず、太陽の角度は地面に垂直となる。 これを図で表すと、図3のようになる。 シエネは太陽が垂直に射す位置にあり、アレクサンドリアは7.2度傾いた位置にある。 算数の得意な団員なら、地球の大きさが計算できるだろう。 計算を分かりやすくするため、図3を図4のように書き直した。計算に使う考えは、 『円弧(円の一部)の長さは、中心角に比例する』
ということだ。簡単な例として、全周が100mmで中心角が90°の円弧の長さを考える。
円全周の角度は360°なので、90°は全周の90/360=1/4となる。
円弧の長さは中心角に比例して全周の1/4だから、円弧の長さは100mm÷4=25mmとなる。
これを式で表せば、円弧の長さ = 全周の長さ × 中心角 ÷ 360
となる。全周の長さが求まるように書き直すと全周の長さ = 円弧長さ × 360 ÷ 中心角
となる。エラストテネスの場合は中心角が7.2°、円弧の長さが5000スタジア(925km)であるから、次のような計算となる。 地球の大きさ(全周)=925km×360°÷7.2°=46250km
現在の最先端の測定で地球の大きさは40008km となっているので、かなりの精度で測定できたことになる。2000 年以上も昔に地球の大きさを計ったエラストテネスには驚く。 さて、日本でも同じような測定が行われたが、それは江戸時代のことだった。次回のかたつむりでその人を紹介する。 多くの団員が知っている有名な人物だ。 (つづく)
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