このレポートは、かたつむりNo.330[2009(平成21)7.5]に掲載されました

戻る

小学生には負けられない。目指せ、日本百名山!(9)
− 世界遺産に登録された知床と最高峰の羅臼岳 −
運営委員 高 木 茂 行
 
北海道
■図1北海道
知床半島
■図2知床半島
エゾシカ
■図3エゾシカ
知床峠
■図4知床峠
オシンコシンの滝
■図5オシンコシンの滝
知床連山
■図7知床連山
エゾツツジ
■図9エゾツツジ
 2004年と昨年のかたつむりに同じタイトルの記事を8回にわたって書いた。これはその続編。 山好きの作家 深田久弥(キュウヤ)さんが日本全国の山を300ほど登り、その中から100の名山を選定して、本にまとめたのが「日本百名山」。 2003年には小学生6年生の大倉由衣(ユエ)さんが小学生で初めて百名山を達成し、テレビや新聞に取り上げられた。 高木運営委員もこれに刺激されて百名山を目指し、現在70座に達したところ。これまで登った山々を参考にして、山の科学を紹介する。
 今回は世界遺産に登録された知床について紹介する。 知床の地名は、アイヌ語のシリエトゥクがもとになっていて、『地の尽きるところ、岬』などの意味だ1)。 知床は図1に示すように北海度の北東端にある半島で、その大部分は図2に示すように遠音別岳から知床岳へと続く知床連山が占めている。 北海道の北東端で標高1000mを越える山々が連なることから、厳しい冬の寒さと遅くまで残る雪が人の侵入を拒んできた。 同じように北海度の東端にある平地の納沙布岬がすっかり観光地化されたのとは大違いだ。
 過酷な自然条件に開発が阻まれたことで豊富な自然が残った。 ヒグマ、オオワシ、エゾリス、エゾシカ(図3)、そして冬になると流氷にのってアザラシもやって来る。 こうした自然が評価され、2005年7月17日には世界遺産として登録された2,3)。 自然が評価された世界遺産としては、白神山地、屋久島に続き日本で3番目の登録となった。図2の赤で囲まれた部分がその領域である。
 知床には観光客向けの牧場やお菓子売り場や遊園地などはない。 カムイワッカの滝、知床横断道路、知床五湖、オシンコシンノ滝など雄大な自然があるだけだ。 そして自然の保護するために細かな配慮がなされている。多くの観光客に知られている知床横断道路も、環境に配慮して通過型の道として作られている4)。 途中の道沿いに観光施設はなく、中間点に知床峠と駐車場がある(図4)だけ。知床の原生林を通り抜ける横断道路に、車が長く留まらないように配慮されている。 知床への入り口にはオシンコシンの滝(図5)があり、運がよければ駐車場の降りてくるエゾシカを見ることもできる。 知床の素朴な自然を味わうなら知床五湖が良い。五つの湖を歩きなら巡るが、ヒグマが観察されると湖に入場制限が引かれる。 前回行った時には二日前にヒグマが目撃されたということで、三湖への道が封鎖されていた。 図6は知床五湖の1つ二湖、図7は知床自然センターから眺めた知床連山である。一番手前に見えるのが、最高峰の羅臼岳である。 知床を象徴するこの山には知床の自然が息づき、『夢の山』とも呼ばれている5)
高木運営委員のこの山への想いは格別である。なにしろ始めて登山を試みたのは23年前の大学生の時だった。 途中で天気が急変して視界が悪くなり、極楽平まで登ったところで引き返した。 月日は流れ、知床が世界遺産に指定された2005年8月に再び登ることにした。 夏休みに合わせて北海道に移動したものの台風が接近していた。平地では陽も射していたが、登ることを断念して知床を観光して一日を過ごした。 そして2007年の8月、3度目の試みは、絶好の天気に恵まれた。登山道の入り口で入山届けを出し山頂を目指した。 図8は大学の時に引きかえた極楽平からの羅臼岳、図9はその先の大沢谷に咲き乱れていたエゾツヅジである。登ること約4時間で羅臼岳山頂に到着した。 ここからは、東に広がる知床連山、羅臼の町、ウトロの町、知床横断道、オホーツク海が一望できた(図10)。
 団員の皆さんも、世界遺産に指定された知床に行き、大自然の美しさに触れて欲しい。 時間があれば羅臼岳の極楽平まで足を運び、山の素晴らしさも味わって欲しい。 登山に必要な装備をしっかり準備すれば、初心者でも極楽平までなら比較的容易に登ることができる。
(つづく)
知床二湖
■図6知床二湖
羅臼岳
■図8羅臼岳




参考文献
1)読売新聞北海道支社編集部:海と森のドラマ 知床−オホーツク回廊を行く,響文社,P32(2005)
2)フリー百科事典 ウィキペディア
3)佐古浩敏,谷口哲雄,山中正実,岡田秀明:世界遺産 知床の素顔,朝日選書779,朝日新聞社,P154(2005)
4)自然公園財団:パークガイド知床,自然公園財団,P46(2005)
5)読売新聞北海道支社編集部:海と森のドラマ 知床−オホーツク回廊を行く,響文社,P63(2005)


戻る