このレポートは、かたつむりNo.332[2009(平成21)9.13]に掲載されました

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小学生には負けられない。目指せ、日本百名山!(10)
− 山の高さと植物分布 −
運営委員 高 木 茂 行
 
ブナ
■図1ブナ
オオシラビソ
■図2オオシラビソ
ハイマツ
■図3ハイマツ
ニッコウキスゲ
■図4ニッコウキスゲ
ワタスゲ
■図5ワタスゲ
森林限界
■図7森林限界
 昨年の夏季活動で、富士山の植物を鈴木先生や相原先生が説明して下さったのを覚えているだろうか。 あるいは御庭の周りには、松のような葉の細い木が多かったことを思い出す団員がいるかも知れない。 山は標高が高いため、気温が低く風も強い。僕らが住んでいる藤沢市とは違った植物が生えている。今回はこれについて紹介する。
 植物の分布をみるのに取り上げた山は巻機山(マキハタヤマ)で、新潟と群馬の県境にある。標高は1967mである1,2)。 巻機山登山口から少しの登ったところで撮ったのが図1だ。周囲には美しいブナの林が広がっている。標高はおよそ1000mぐらいである。 このあたりの樹木は、秋になると紅葉して葉が落ちるいわゆる落葉広葉樹が中心である。 さらに登り、標高1500m付近で撮ったのが図2で、風下に枝を延ばしたオオシラビソである。 この付近の樹木は一年中緑で葉の細い常緑針葉樹が中心である。
 さらに登り、標高1800〜1900m目以上になると背の高い樹木はなくなる。 図3のようなハイマツが生え、その周囲にはニッコウキスゲ(図4)やワタスゲ(図5)などのお花畑が広がる。 山の夏は短く、植物は同じ時期にいっせいに花を咲かせる。こうして一面が花に覆われた場所がお花畑である。 ニッコウキスゲは夏の尾瀬で一面に咲く花として有名で、観光ポスターにもよく取り上げられている。 ワタスゲの白い綿毛は花ではなく実の状態である3)
 巻機山見たように山での植物分布は、一般的には図6のようになることが調べられている4,5)。 山の高さにともない、下から丘陵帯、山地帯、亜高山帯、高山帯へと変わる。丘陵帯は僕らが生活しているところである。 山地帯ではブナやミズナラ、亜高山体ではオオシラビソやコメツガ、高山帯ハイマツがおもな植物となる。 高さの目安は富士山で、標高500〜600mまでが丘陵帯、1500mまでが亜高山帯、2500mまでが高山帯とされている。
 巻機山は富士山より北にある分だけ、この境目の標高が低くなる。 巻機山の1000mは山地帯、1500m付近は亜高山帯(アコウザンタイ)、1800〜1900mから上が高山体となっている。 また、あるところを境に高い樹木が無くなり、亜高山帯から高山帯に移る。この境界を森林限界という。 図7は巻機山の山頂付近から下を見た写真である。 下の方にはオオシラビソが生えているが、その上には背の高い樹木が見られないのが分かる。 これが森林限界である。また、写真で白く見えるのは夏でも解けない雪(雪渓 セッケイ)である。
 今年の夏季活動では雨のため千畳敷には行けなかったが、下りのロープウェイでは山の高さと植物分布について説明してくれる。 少年団では十年以内にもう一度、駒ヶ根を訪れる予定とのことだが、紅葉の美しい秋、 お花畑に花の咲く夏に家族の人と千畳敷に行ってみてはどうだろうか?
さて、山の季節もそろそろ終わりですのでこのシリーズはいったん中断し、10月からは別の内容を連載します。

(終わり)




参考文献
1)るるぶ企画編集局:日本百名山 山歩きガイド上,P114〜117 (2004)
2)小泉武栄,清水長正:山の自然学入門,古今書院,P80〜81 (1992)
3)木原浩:高山植物,山と渓谷社,P262〜263,P248 (1993)
4)小泉武栄,清水長正:山の自然学入門,古今書院,P7 (1992)
5)田代博,藤本一美,清水長正,高田将志:山の地図と地形,山と渓谷社,P159〜161 (1996)
植物分布
■図6植物分布


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