このレポートは、かたつむりNo.337[2010(平成22)2.7]に掲載されました

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身近になったぞ! 地球にやさしいエコカー(3)
− ゼロ・エミッションを目指す電気自動車 −
運営委員 高 木 茂 行
 
携帯電話とLiイオン電池
■図1 携帯電話とLiイオン電池
Liイオン電池
■図2 Liイオン電池
リチウムイオン電池の構造
■図3 リチウムイオン電池の構造
三菱自動車の電気自動車
■図4 三菱自動車の電気自動車
日産の電気自動車
■図5 日産の電気自動車
電気自動車の構造
■図6 電気自動車の構造
ホンダの電気自動車
■図7 ホンダの電気自動車
トヨタの電気自動車
■図8 トヨタの電気自動車
 ガソリンで動く車は二酸化炭素を発生し、温暖化の原因となっている。 これに対して電気自動車は、二酸化炭素を排出しないから究極のエコカーとなる。 二酸化炭素を出さないので排出はゼロである。 英語で外に放出したり排出したりすることをエミッションというから、 電気自動車は二酸化炭素のゼロ・エミッションを実現できる理想の車というわけだ。
 ところで乗り物を電気で動かすことはそんなに難しいことではない。 電車は電気で動いているし、新幹線なら時速300kmで走ることもできる。 それでも、街中でも電気自動車は見かけないし、エコカーと言えば前回紹介したガソリンとモータのハイブリッドカーが主流となっている。 どうして電気自動車は普及しないのだろうか? 答えは1つ。 電気に蓄えられるエネルギーはガソリンの1/20以下と少ないため走れる距離が短く1)、 充電に時間がかかってしまうからだ。
 電気自動車の性能は、エネルギーを蓄える電池性能に依存してきた。 これまでに多くの電気自動車が作られてきたが、電池の問題を解決することができなかった。 しかし、電池の性能は自動車と別な分野で急速に向上した。 携帯電話、デジカメなどでも高性能な電池が必要となり、リチウム(Li)イオンという新しい電池が開発されたからだ。 図1は携帯電話のカバーを開けたところ、図2はその中に入っているLiイオン電池の拡大写真である。 『Liイオン』と書いてあるのが見える。
 Liイオン電池の仕組みを示したのが図3である2)。 難しそうに見えるが、動作原理はいたって簡単。 プラスの電荷をもったLiイオンを、プラス(リチウム含有電極)からマイナス(炭素) 電極に移動させることで電気を充電することができる。 逆に、マイナス電極からプラス電極にLiイオンが移動することで電気を取り出すことができる。 少し荒っぽい例えになるが、リフトのかかった山の上に多くの石をリフトで持ち上げるとする。 この持ち上げる作業が充電で、石がLiイオン、山の下がプラス極、山の上がマイナス極と考えればよい。 持ち上げた石を下に落とす時、石にロープをつないでおけば、いろいろな物を引っ張りあげることができる。 これが電気を取り出すことに相当する。
 Liイオン電池が開発されたことで、街中を走る電気自動車が現実を帯びてきた。 昨年、三菱自動自動車は図4のi-MiEVを自治体向けに販売し始め3)、今年は一般への販売が決まっている。 家庭用コンセントを使って14時間充電すれば、約160km走ることができる。 夕方から充電しておけば朝には終わり、藤沢市内はもちろんのこと東京や新宿までシッピングに行って帰って来られる。 今年は日産自動車も、図5の電気自動車リーフを販売する予定になっている4)。 モーターショーでは図6のように内部の構造も展示されていた。 電池は車の中央に積まれていて、フィルム状のLiイオン電池を重ねた方式となっている。 同じように、ホンダ(図7)やトヨタ自動車(図8)でも電気自動車の開発が始まっている。
 電気自動車は、走行距離ではまだガソリン車には及ばないが、買い物をしたり近くの公園に出かけたりと日常で使うには十分だ。 また、電気代はガソリンに比べて1/10程度と安くなる。 大阪まで行くのに約40リットルのガソリンを使うと約5000円必要だが、電気代は500円ほどで済む。 それに、なんといってもゼロ・エミッションだ。今後のいっそうの発展に期待したい。






参考文献

1)御堀直嗣:電気自動車が加速する!日本の技術が拓くエコカー進化形,評論社,P8〜24(2009)
2)飯塚昭三:燃料電池車・電気自動車の可能性,グランプリ出版,P36(2006)
3)電気の歴史イラスト館・ リチウムイオン電池
4)三菱自動車
5)日産自動車・ 電気自動車「リーフ」


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