このレポートは、かたつむりNo.353[2011(平成23)4.3]に掲載されました

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東日本大震災の影響は(2)
− 食品で騒がれているベクレルについて −
運営委員 高 木 茂 行
 
 前回のかたつむりでは、福島第一原発事故による放射線の影響について紹介しました。 読んでいただいた方から多くの感想をいただき、この事故に対する関心の高さを改めて、感じました。 今回は、水道水、野菜、原乳の影響で話題となったベクレル(Bq)についても考えてみましょう。
 まず、前回のシーベルトと今回のベクレルの違いです。これを理解するためには、放射線と放射能の違いを知る必要があります。 2つの言葉はしばしば混合されて使われていますが、厳密には次のように異なるものを示しています。
 放射能:「放射線を出す能力」で、単位はベクレルです。
 放射線:「放射能を持つ物質から放出されるのが放射線」で、単位はシーベルトです。
分かりやすくするため身近にある照明に例えると、光を出す光源(電球)の能力に相当するのが放射能で、どれくらいの光を受けるかに相当するのが放射線です。 光源がいくら強くても遠く離れると受ける光は弱くなり、放射能と放射線もこれと同じです。
表1 藤沢近く農畜産物の放射線濃度
農畜産物の種類 ヨウ素 放射能濃度(Bq/kg)
測定値 測定値基準値
ホウレンソウ(藤沢市) 露地 600 2000
コマツナ(横浜市) 露地 530 2000
コマツナ(茅ヶ崎市) 露地 540 2000
原乳(湘南) 9.6 300
 放射能を持った食物を食べると体に入って中から放射線を受けることから、食べ物の場合、人体への影響を示すために放射能(ベクレル)が使われます。 ベクレルを基準に、藤沢市の現状を考えます。表1は広報ふじさわの臨時号(3月31日)に掲載された測定値と基準値を、ヨウ素についてまとめ直したものです。 ホウレンソウは基準値2000Bq/kgに対して、測定値は600Bq/kgと3分の1以下となっています。 原乳では基準値300Bq/kgに対し、測定値9.6Bq/kgと30分の1以下となっています。 ホウレンソウ、原乳ともに人体への影響のないことが分かります。
 ベクレルをもとに人体への影響をもう少し詳しく考えましょう。
1.ベクレルとシーベルト
 ベクレルは放射能を表す単位で、1秒間に1個の原子が崩壊して放射線を出す時が1ベクレル(Bq)です。 表1で藤沢市のホウレンソウ草は600Bq/kgとなっていますが、1kgのホウレンソウで1秒間に600個原子が崩壊していることを示しています。 次に、ベクレルとシーベルトとの関係です。ベクレルは一定の値をかけることでシーベルトに変換できます。 ただし、放射性物質によって換算値が異なり、ヨウ素131の場合、
  1ベクレル=0.000000022シーベルト  となります。
2.人体への影響
 次に人体への影響です。実は人の体の中にも放射線を放出する元素が含まれ、その値は大人1人で6000〜7000Bqです。 温泉の中にはラジウム温泉というのがあり、リューマチや胃腸の疾患に良いと言われています。 ラジウム温泉の放射能は、1リットルあたり100,000Bqです。藤沢市の600Bq/kgよりずっと大きいことがわかります。
 前回のかたつむりで、人体に影響を与える放射線は1年で1mSvと書きました。 では、藤沢市の600Bq/kgのホウレンソウを食べるとどうなるかを計算してみましょう。ベクレルとシーベルトの換算から600Bq/kgは、
  600 Bq/kg × 0.000000022 (Sv/kg)=0.0000132 Sv/kg = 0.0132mSv/kg  となります。
 毎週1回、200g(0.2kg)のホウレンソウを食べるとします。1年間で食べる量は、
  0.2 kg/日 × 52日 = 10.4kg  となります。
したがって、1年間の放射線量は、
  0.0132 mSv/kg × 10.4kg = 0.137 mSv
となります。1mSvの7分の1で影響がないことが分かります。
 4月活動では雑草を食べます。雑草のレベルが藤沢市のホウレンソウと同じと仮定し、200gの雑草を食べたとすると、
  0.0132 mSv/kg × 0.2 = 0.0026 mSv
影響の無いレベルであることが分かり、安心して食べられます!!
 2回にわたり、震災の影響の話題となってしまいました。次回は明るい話題を紹介します。


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