このレポートは、かたつむりNo.237[2003(平成15)1.25(Sat.)]に掲載されました

戻る

続「石炭の科学」(1)
−−乾留でできるコークスとタール−−
運営委員 小 野 哲 夫
 
 12月の活動で「石炭の科学」の実験の一つとして、石炭の乾留を行ないました。 フラスコの中の石炭をバーナで加熱すると、初めに水蒸気が出て、 次にガスとタールが出てきました。そして長い時間乾留すると、ガスやタールが出なくなって、 残った石炭はコークスとなります。でも、時間がかかるので、 コークスになるまでの実験は出来ませんでした。一方、タールは三角フラスコに取り、 ガスは火を付けて燃やす実験を行ないました。これは、みんなも観察しましたネ。
 しかし、このガスとタールは薬品など化学合成品の原料として利用されています。 どんなものが作られるか、図に示します。
 図にあるように、工場ではコークス炉で乾留を行ないます。 これは、乾留の主な目的がコークスを作ることにあるからです。 コークスは鉄を作るために必要ですから、たくさん作られています。 そのとき出来るガスとタールから、いろいろなものを取り出すのです。
 先ずガスですが、この中に入っているアンモニア・ガスや、 大気汚染の元となる硫黄(イオウ)の化合物(SO2ガスやSO3ガス)、 さらにガス状の油分(軽油)を取り除いたものをガスとして利用します。 これは燃料ガスとして利用するほか、アンモニアやメタノールなどの薬品を作る原料となります。
 タールは、石炭(英語でコールという)から取ったものの意味でコールタールと呼ばれ、 蒸発温度の違いから成分を分けます(これを蒸留といいます)。蒸留温度の低い方からカルボン油、 中油、メチル油、洗浄油、さらにアントラセン油が取り出され、ピッチが残ります。 取り出された油分は、軽油を含めて化学合成品の原料として使われます。 合成品はピリジン(医療用)、BTX(ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、ナフタリンなどの他、 フェノール樹脂の原料の石炭酸、染料のアントラセンおよびカルバゾールなどです。 バインダーピッチとピッチコークスに分けられたピッチは、 高温でやわらかく常温で固まることから乾電池の電極の固定などに使われています。
 このように石炭は、化学合成品の原料として大変役立っています。

最後に問題です!:石炭は乾留によって、コークスとガスと タールに分かれる。
の中に入る言葉は何でしょう。  正解者には、2月活動日にコークスのサンプルを差し上げます。)

戻る