このレポートは、かたつむりNo.242[2003(平成15)4.20(Sun.)]に掲載されました

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続「石炭の科学」(2)
−鉄とコークス−
運営委員 工学博士 小 野 哲 夫
 
 昨年12月の活動で「石炭の乾留」を行なって、ガスとタールが出て来るのを観測しました。 そのまま高温度で乾留を続けるとガスやタールが出なくなって、残った石炭はコークスとなります。 でも、時間がかかるので、コークスになるまでの実験は出来ませんでした。 そこで、コークスの話をしたいと思います。 => また、最後に賞品つきの問題だよ!
 コークスは鉄を作るために必要です。鉄の原料である鉄鉱石を熔かし、 鉄と不純物とを分けるのです。実際は、鉄(Fe)と酸素(O2)とが 結びついている鉄鉱石(FeOやFe2O3)などから、 コークスの炭素(C)が酸素(O)を奪い取る仕事を行ないます。 これを、化学式で書くと次のようになります。 (少し難しいかもしれませんが、()の説明を読んでください。 それでも、ここで言う1つ2つは化学の単位のモルです!)
2FeO + C → Fe + CO2
(鉄鉱石2つにコークス1つが、鉄1つと炭酸ガス(CO2)1つになる)
2Fe2O3 + 3C → 4Fe + 3CO2
(鉄鉱石2つにコークス3つが、鉄4つと炭酸ガス(CO2)3つになる)
 このように、コークスの炭素が鉄鉱石の酸素を奪い取って炭酸ガス(CO2)となり、 重い鉄は高炉(溶鉱炉とも言う)の底に溜まります。ここで、鉄鉱石の酸素を奪い取るのは、 石炭の炭素でも良いと思いませんか?確かに、石炭の大部分は炭素です。 でも、鉄を作る時のコークスの役割として、細かく砕けないで、 その間を熱風や熔けた鉄が流れやすくなるという仕事も行ないます。 石炭は燃えるときに砕けてしまうことから、隙間を塞(ふさ)いでしまいこれが出来ません。
 このため、面倒でもコークスにしてから使います。 これは、石炭をガスバーナの炎の中に入れて燃した実験で、石炭が割(わ)れたり、 小さな欠けらが撥(は)ねだしたことで判るでしょう!
 コークスを作るための石炭は、ただ燃すだけの石炭と違います。 コークスの原料用ということから原料炭と呼ばれるもので、加熱されると軟らかくなって、 流れるような流動性を少し示します。ですから、粘結炭とも言われます。 この原料炭を乾留すると、この前の実験のようにガスとタール(揮発分と呼ばれる)が先ず出ます。 この後、順に軟らかくなって行きながら石炭中の水素(H)分が抜け出て、 ほとんど炭素だけのコークスとなります。このコークスが鉄を作るのには、 原料として鉄鉱石とともに大切なのです。

 最後に問題です:コークスを作る原料炭は(   )炭とも呼ばれる。
(   )の中に入る言葉は何でしょう!
正解者には、5月活動日に石炭かフライアッシュ(石炭灰)のサンプルを上げます。

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