このレポートは、かたつむりNo.244[2003(平成15)6.8(Sun.)]に掲載されました

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続「石炭の科学」(3)
−−石炭と電気−−
運営委員 工学博士 小 野 哲 夫
 
 前回石炭からコークスを作ってそのコークスを用いて鉄を作ることを書きました。 そこに書きましたように、石炭は鉄を作るために欠かせない原料の一つです。
 また、その一方で、石炭は生活のためのエネルギー源として燃料に用いられます。 みんなのお祖父さんやお祖母さんの時代には、お風呂を沸かすのや、 学校のストーブなどに使われていました。 そして今では、工場などの熱を得るための燃料として燃されています。 特に、電気を作るために発電所で多くの石炭が燃されています。 このような発電所を石炭焚き発電所(火を燃すことを「火を焚く」ということからです)、 あるいは石炭火力発電所と言います。
 今回は、この石炭火力発電所の話をします。 また、最後にはクイズだよ!
電気を作るのを発電と言います。発電は、発電機を回すことによって行なわれます。 (今では太陽電池や燃料電池という新しい発電方式が開発されていますが、 大部分の電気は発電機を回すことによって作られます。)
 何を使って発電機を回すかによって、発電所の名前が決まります。 2001年10月に見学した宮が瀬ダムと発電所では、 ダムにためた水の落ちる力でその下の発電所の水車を回して発電します。 これを水力発電所と言います。オランダの風車ではありませんが、 風の力によって風車を回して発電するものが風力発電所で、 日本でも各地に作られるようになりました。 さらに、火を燃してガスタービンや蒸気タービンを回して発電する火力発電所があります。 2000年9月に見学に行った横浜火力発電所がそうです。 横浜火力発電の燃料はLNG液化天然ガスでしたが、この他、 石油や石炭などの燃料が使われています。この使われる燃料によってLNG火力発電所、 石油火力発電所、さらに石炭火力発電所などと呼ばれる場合もあります。 (原子力発電所では、原子力燃料(核燃料)を燃やして蒸気を作っています。 蒸気を作った後は、火力発電所と同じようにタービンを回して発電します。)
 燃料を焚いて電気を作る火力発電所では、 ガスタービンや蒸気タービンを回して発電すると先に書きましたが、 蒸気タービンを回して電気を作ることをもう少し説明します。 蒸気タービンは蒸気で回すのですから、先ず水から蒸気を作ります。 家庭でお湯を沸かした時にヤカンから出る蒸気と同じですが、 これをさらに暖めることによって高い温度で高い圧力の蒸気にします。 火力発電所で火を燃すのはボイラと呼ばれる部屋の中で、 この中で燃される火によって水が暖められるように部屋の周りは水の流れるパイプで 全面が覆われて居ています。ここで水が沸きあがって蒸気となります。 この蒸気を、さらに過熱器といわれるところで高温高圧の蒸気にして、タービンに送ります。 タービンには羽根車がたくさんあって蒸気がこの羽根車の間を流れることによって 回転力を出す仕事を行ないます。 特に高温高圧の蒸気はただ流れるだけではなく、 膨張して体積が大きくなることから強い回転力が生れます。 この回転力によってタービンが回り、これにつながっている発電機が回って電気を作ります。 発電機は、モーターと逆の原理で発電するのですが、 構造はモーターと同じで磁石とコイルとから出来ています。
 電気をたくさん作るには、蒸気をいっぱい作らねばなりません。 蒸気をいっぱい作るためには、一度に多くの燃料を燃して強い火力の炎とすることが必要です。 燃えるのが速い液体の石油やガスのLNGは、比較的簡単に強い火力が得られます。 しかしながら、石炭は固体のため燃えるのが遅く、 時間がかかることから一度に多くを燃すことがなかなかできません。 昨年12月の「石炭の科学」で実験したように、 塊(かたまり)である石炭は簡単には火が着きません。 また、火が着いても燃え方がゆっくりで、時に消えてしまうこともありました。 このことから、電気をいっぱい作るために大きなボイラで多くの石炭を一度に燃すためには、 その工夫が必要です。 そこで、ボイラで燃す石炭を細かに砕いて、微粉炭と呼ばれる粉のようにします。 これを、空気の流れに載せてバーナに運んで、 200℃ぐらいに暖めた空気によって霧吹きで噴き出すように噴霧(ふんむ)して燃します。 これによって、石炭一粒一粒が小さく、空気と良く混ざり合うことから、 比較的短い時間で燃えます。 こうすることによって、一度に多くの石炭を燃すことが出来ます。 その結果、強い火力を得ることができ、多くの電気を作ることができるのです。

 微粉炭は、石炭を砕いて粉にすることから、写真に示すように角張っています。 これを燃して残る灰(アッシュ)は、燃焼時の高温で熔けるため写真のように丸くなります。 特に細かなものはフライアッシュと呼ばれ、 宮が瀬ダムで使われているようにコンクリートに混ぜてダムなどの建設に使われます。 (フライアッシュのことは宮が瀬ダムの見学の時に少し書きましたが、 また別の時にお話します。)

最後に問題です:火力発電所で燃される石炭は、
      
炭にして燃されます。
      
の中に入る言葉は何でしょう。正解者には、 7月活動日にフライアッシュのサンプルを差し上げます。)



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