このレポートは、かたつむりNo.449[2018(平成30)01.13(Sat.)]に掲載されました

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発電所のあれこれ(1) ―水力発電所と火力発電所―
運営委員 小 野 哲 夫
 
 昨年の夏季合宿で水力発電所の見学をしました。そして、その事後学習で電気を作る発電の原理や、水車を作って水の力で回すことなど水力発電のことを学びました。 しかし、発電所は水力発電所ばかりではなくて、火力発電所や原子力発電所、さらにソーラー電池による太陽光発電所などもあります。
 そこで、電気を作る発電所の話をしましょう。初めは火力発電所の話を水力発電所とくらべながらお話します。

1.水力発電所と火力発電所
 火力発電所は電池で発電する太陽光発電所と違って、水力発電所と同じように発電機を回して発電します。 この発電機を水のエネルギーをもとにして、水が水車の羽根車(プロペラ)を直接回すことによって発電するのが水力発電です。 これに対して、火力発電所の多くは石油・石炭や、液化天然ガス(LNG)の燃料をエネルギー源として、 燃やした熱をもとにボイラーで水を沸騰させ、高温・高圧の蒸気を作ります。 作った蒸気で蒸気タービンの羽根車を回して、水力発電と同じように発電機を回します。 高温・高圧の蒸気を作るのは、圧力鍋でお湯を沸かすことと同じで、圧力が高くなると水の沸騰温度は高くなります。 そして、高温・高圧の蒸気は大きな力を出すことから、1台で出力10万〜50万KWと大きなものが多く、 最近では100万KWに届くような大きなものまで作られています。


    奈良田第一発電所導水管
    磯子火力発電所(J-POWER HPより)
    火力発電所のタービン(北陸電力HPより)
 これに対して、見学した奈良田第一発電所は発電機2台で2万7,600KWでしたから、火力発電が水力発電より大型の発電所となっていることが分かります。
  水力発電は水をエネルギーとしているので作ってしまうと、燃料をエネルギーとしている火力発電と違って燃料代はかかりません。 したがって電気を安く作ることができるのですが、水力発電所には水車を回すために多くの水が得られること共に高低差のあることが必要となります。 このため、水力発電所を作る所は、多くの電気を使う都会や工場地帯から離れた山・川のある場所となってしまいます。 すると送電する距離が長くなってしまい、送電ロスが生じて送られる電気が減ってしまう不都合があります。 しかしながら、地球温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)を発生させないクリーンなエネルギーとして注目されています。

 一方、火力発電所は作った蒸気のエネルギーを最大に利用するため、 蒸気タービンを回した後の蒸気を復水器という機器で水に戻すように冷す冷却水を必要としています。 このため、海辺に作られることが多く、これはまた多くの燃料を外国から購入しているわが国では、その荷揚げにも便利なことともなっています。
 燃料は先に述べましたように石油・石炭などが使われていますが、 過去にはこれらを燃やすことによって生じる燃焼排ガスに含まれるわずかな成分ガスから健康被害が生じることがありましたが、 それをクリアする対策技術が開発されています。
 しかし、地球温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)が発生することが問題となってきた近年は、炭素(C)の固まりと言われる石炭や、 炭素が多く含まれている石油の利用は避けられるようになってきました。 その代わりに、炭素の含まれる量の少ない天然ガス(LNG)が使われるようになってきました。

 それでも全ての火力発電所でLNGを使うことは、これまでに石油・石炭火力発電所が作られていることやLNGの量にも限りがあることなどからできません。 そこで、地球温暖化を防ぐための二酸化炭素の発生量を減らす方策として、水力発電などクリーンのエネルギーの利用と共に、 火力発電所からの二酸化ガスの発生量を減らす技術の開発が進められています。
 このお話は、次回にいたしましょう。


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