このレポートは、かたつむりNo.451[2018(平成30)02.18(Sun.)]に掲載されました

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発電所のあれこれ(2) ―地球温暖化と発電所―
運営委員 小 野 哲 夫
 
 前回、火力発電所のお話をしましたが、火力発電では火を燃すため(正しくは燃料を燃すのです) 二酸化炭素が発生することから地球温暖化が問題となっています。
 燃料に含まれる炭素分が燃えて二酸化炭素となるのですが、 大空に含まれる二酸化炭素が地球の熱を宇宙に逃がしてやることなく閉じ込めてしまうので地球温暖化ガスと呼ばれます。 このような働きをするガスは二酸化炭素だけではなく他のガスもありますが、 人間が生活するために多くの燃料を使うので大量の二酸化炭素が生じることから問題となっているのです。 特に、生活に欠かせない電気を作る発電の大部分は火力発電所で作られていることから、 大量の燃料を燃すので二酸化炭素の発生量も多くなっています。 (原子力発電所が停止していた2016年では、全国の発電量のおよそ90%が火力発電所で作られました)

県 愛川太陽光発電所

風力発電所

 この二酸化炭素の発生量を抑える方策の一つとして、水力発電、ソーラー発電、 ならびに風力発電などのような自然エネルギーの活用があります。 水力発電は自然界に降った雨水あるいは雪解け水で、ソーラー発電は太陽光、 風力発電は風の力でと燃料を燃すことなく電気を得ることができるので二酸化炭素の発生はありません。 しかしながら、これらの発電はその一つ一つの発電力が小さいため、 各地に作られるようになっているものの日本で必要とする電気量のほんの一部分しか発電出来ていません。

 一方で、原子力発電所は原子力エネルギーによって水を暖めて蒸気を作り、 蒸気タービンを回して発電するので二酸化炭素の発生はありません。 しかしながら、東日本大震災の時の事故など放射能の問題を持っているため、 大量の電気を作るためにはどうしても火力発電所が必要となります。

そこで、必要とされている火力発電所から発生した二酸化炭素を大気中(空気中)に出さないようにする方策や、 発生量そのものを減らす方策が考えられています。 大気中に出さないようにするには、二酸化炭素は圧力をかけると圧縮されて液体になることから、 液体にして取ってしまおうというのです。取り集めた液体の二酸化炭素は石油を掘った後の地下に埋め込むことや、 液体の二酸化炭素は水より重いことから海の深いところに沈めてしまうことなどが考えられています。 しかしながら、これらのことはまだ研究されているところです。

 その一方で、発生量そのものを減らすには炭素分の多い燃料を燃さないことです。 このため、ほぼ炭素の固まりと言える石炭より炭素分の少ない石油、さらに少ないLNG(液化天然ガス)が良いこととなります。 また、燃料の持っているエネルギーをムダなく使うことによって燃料全体の使用量を減らすことができて、 その結果から、全体の二酸化炭素の発生を減らすことができます。エネルギーをムダなく使うということは、 エネルギーの源(もと)を100としてその内のいくらが有用なエネルギーに変えられたかという数字で表される効率を高めることです。 発電の効率は、前回お話しした水力発電では80〜90%であるのに対して、火力発電では40〜45%と低くなっています。 この値は50年前の30〜35%からは改善されているのですが、 さらに発電効率を向上させることができれば二酸化炭素の全体の発生量を少なくすることができます。

 そこで開発されたのがLNG によるコンバインドサイクルという発電方式で、効率は50〜60%となります。 この方式は、図のように先ずガス燃料の燃焼で飛行機のジェットエンジンのようにガスタービンを回して仕事をさせ、 その後のまだ熱い排気ガスの熱を利用して蒸気を作って蒸気タービンを回すという2 度目の仕事をさせます。 これによって、高効率が得られるのです。
 また、ガスタービンや蒸気タービンを回すガスあるいは蒸気の温度・圧力を高めることによっても、 タービンの効率が上げることもできて結果的に発電効率が向上します。 このためには、タービンの材料が高温・高圧に負けないことが必要となるので、材料の開発、 例えばガスタービンの羽根にセラミックスを用いることも研究されています。

 このような技術開発が進められているものの、 大気中の二酸化炭素濃度は年々増加していることからその対策が課題となっているのです。

 今回は地球温暖化に関係したお話をしましたが、次回は日本で初めての発電所は町の中に出来た火力発電所であったことや、 馬車に積まれた移動式の発電機で電灯のデモンストレーションをしたことなどをお話しましょう。


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