このレポートは、かたつむりNo.457[2018(平成30)07.01(Sun.)]に掲載されました

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こわい話を科学する   第2話 みんなに見えた幽霊
運営委員 山田 佳子
 
 第1回の話を書いて石井団長とお話をしました。「前後はいい話だったけど、怖い話は全然怖くないね」と言われました。 ここで感じたのは、幽霊を信じている人とそうでない人の認識の違いです。 幽霊を信じない人にとって、怪談話は怖く感じないのだと改めて認識しました。
 この分野で人間を大きく分けると、幽霊が見える(霊感がある)人と見えない(霊感がない)人になります。 また、見える人でも幽霊を信じなかったり、幽霊が見えない人でも信じているということがあります。 私は見えない人ですが、見える人から話を聞くと、「霊に好かれる(利用される)人」だそうです。 見えはしませんが、面白い体験がいくつかあります。だから、見えないなりに信じることができます。 ただ、科学が好きなので、ある程度までは科学的な理由を考えてみようと思っています。
 けれど、今回は私の体験ではなく、友だちのDちゃんから聞いた話をします。

 Dちゃんが小学生くらいの頃のお話です。何年も前なので、場所をはっきりと覚えていないそうです。 藤沢市内のお寺に、暗くなってから行きました。親戚の子供たち5〜6人でホタル狩りをしたそうです。

 狩りと言っても、ホタルを捕まえていたわけではありません。 日本語は美しくて、野山に行ってきれいな物を見ることを『狩り』と表現することがあります。 ちょうど今頃、初夏になると、ホタルが成虫になって光を放ちます。オスもメスも結婚相手を探すために光ります。 この期間はだいたい1〜2週間です。きれいで流れがゆるやかな川や水田などの水際の草むらで、 水温が15〜20℃くらい、エサになるカワニナがいるところでホタル狩りができます。 去年の11月活動で舞岡公園に行った団員さんは、駅から公園に向かう道の横にあった川にカワニナ(写真)がいたのを見たかもしれません。 この条件に当てはまるので、舞岡公園に向かう川ではホタル狩りができるかもしれません。 でも、藤沢にもそういう場所がいくつかあります。少し話がずれました。こわい話に戻します。

 みんなでホタルを見ていると、お寺から女の人がやってくるのが見えたそうです。髪が長くて、ワンピースを着たきれいな女の人です。 ヒョコヒョコと、どこか不自然な歩き方をしていたので、Dちゃんは違和感を持ちました。 その女の人が、ゆっくりゆっくりと、Dちゃんがいるところに近づいてきます。女の人は止まりません。 『何かおかしい』とDちゃんは怖くなったそうで、近くにいたお姉さんに「ねえちゃん、あれ見て」と声をかけました。 Dちゃんともう一人の子がその女の人をじっと見ていました。 けれど、「あ?」と言ったお姉さんが女の人に目を向けた瞬間、そこにいたはずの女の人は消えてしまいました。 それを見てびっくりしたDちゃんは、同じように見ていた子と二人で知り合いのお家に駆け込んだそうです。
 けれど、お姉さんも他の子たちも戻ってきません。何かあったらどうしようと、怖かったそうですがホタル狩りをしていた場所に戻りました。 すると、お姉さんや他の子たちはそれまでと変わらずホタルを見ていました。 女の人が消えてしまった話をすると、お姉さん以外の子たちもその女の人を見ていたそうです。 でも、特に怖がった様子もなく、ホタルを見るのを楽しんでいたそうです。それを見て、Dちゃんもホタル狩りを続けたそうです。 お姉さんがいれば大丈夫だと思ったそうです。そして、『ねえちゃんには絶対に逆らうまい』とも思ったそうです。 幽霊に避けられる人が居れば安心ですね。

 この話を取り上げたのは、幽霊を見たのがひとりではなかったからです。 ほとんどの人が見ているので生きた人間かもしれませんが、一瞬で消えたことから違う可能性があります。 5〜6人で姿を確認して、怖くなった人が2人、気にしなかった人が2〜3人、幽霊に怖がられた1人。 あとは、お寺の人が子供たちを楽しませようとしてくれた説もありますが、本当のことはわかりません。 この時何があったのか、考えてみるのも楽しいかもしれません。
 次回は、見える人と見えない人、そして可視光線についてお話したいと思います。



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