このレポートは、かたつむりNo.488[2020(令和2)10.25(Sun.)]に掲載されました

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怖い話を科学する 6
交通ルールを守りましょう
運営委員 山田 佳子
 
 それは、生暖かい風が吹く夏の夜でした。閑静な住宅街を通る道を、私は自転車で家路を急いでいました。 街灯が数メートルおきにあり、暗い場所と明るい場所が交互にあります。通行人はほとんどいません。そこへ、正面から人影が近づいて来ました。 私は進行方向左側を進んでいました。私から見て右側を歩いていたその人を遠目にちらりと見て、びっくりしました。その人に顔がありません。 胴体だけが歩いていたのです。首のない胴体がよろめきもせず、まっすぐきっちり歩いていたのです。心臓が飛び出るかと思いました。 けれど、何事もなかったかのようにペダルをこぎ続けました。その人影は徐々に近づいてきます。 でも、私が通っていた反対側を歩いていたので、ぶつからないで行けそうです。
 幽霊などに出会った時は、まじまじと見てはいけません。何かが居ると気づいていることを知られてはいけないからです。 気づいていることがわかってしまうと、ニヤリと笑って、ついてきてしまいます。だから、そのまま進みました。 そちらを凝視しないように、まっすぐ前を向いていつもと同じように自転車をこぎました。 驚いてブレーキをかけたり、いつもと違うことをしてはいけません。こちらが気づいていると幽霊に知られては、絶対にいけないのです。 距離もあったので大丈夫だと思いました。心を無にしていれば大丈夫です。けれど、心を無にして事故をおこしてもいけません。 幽霊も怖いですが、現実はもっと怖いです。周囲の確認は怠ってはいけません。
 その胴体が近づいてきて、街灯の明かりがよく当たる場所に来ました。『あ……』と思いました。 黒っぽいマスクをしているだけの生きている男の人でした。 熱中症対策のために2mのソーシャルディスタンスが取れればマスクは外してもいいと厚生労働省は言っていますが、 その男の人は周囲に誰も歩いていないのに律儀にマスクをしていました。新型コロナウィルス対策としては正しいです。 マスクを外した場合、そのマスクをどこにしまうのかという問題があります。 もしもマスクの外側にウィルスが付いていたら、ポケットなどに入れるとポケットにウィルスが付着してしまいます。 あごに下げたマスクは、もしもあごや首にウィルスが付いていたら、マスクの内側にウィルスが付いてしまいます。 それを再び口に着けるとウィルスを体内に入れてしまう恐れがあります。
 マスクをしていたことは、とても良いことです。でも、ここで問題にしたいのは色です。 今回は暗い色がマスクだけだったので胴体は見えました。もしも、全身が暗い色の服だったら、全身が見えなくなることがあります。 夜道を暗い服で歩いていると、車のライトが当たっていても30mくらい離れると確認できません。 時速60Kmで走っている車は、発見して急ブレーキをかけて停まるまでに40mくらい走ってしまいます。 白い服なら50mくらい離れていても見えるので、この場合は間に合います。
 明るい所で見れば、ダークブラウンのマスク、かっこいいです。それに合わせた服装をすればバッチリです。 しかし、今回のことで本当に暗い色だと夜道に溶け込んでしまうのだということを実感しました。 濃い色のマスクは背景に溶け込んでしまい、私にはまったく見えませんでした。胴体がスタスタ歩いていて恐怖でした。
 夜に歩くことがあるのなら、服装をできるだけ白に近い色(緑や黄色も見えます)にしたり、光るような物や反射する物をつけましょう。 そして、交通ルールを守りましょう。
 では、交通ルールについて少しだけお話します。歩行者は歩道などがなかった場合、原則として右側を歩きます。 さきほどの男の人は進行方向左側を歩いていました。大した理由もないようですが、歩行者は右を歩くルールがあります。
 そして自転車は軽車両です。だから、ほぼ車と同じルールになります。自転車は車道を走らなければならなくて左側通行です。 そして、左側というよりも、左端を走ります。

■「自転車および歩行者用」

■「止まれ」の標識
※ 道路にも大きく白で
止まれと書いてあります。
自転車専用道路の矢印を無視して逆走している人を見かけますが、もちろんしてはいけません。車は左側通行です。
 同じ向きに走っていれば、ぶつかった時にその人にかかるエネルギーは引き算になります。 でも、逆向きだとエネルギーが足し算になってしまいます。正面衝突は危険です。 逆走はやめましょう。事故になってしまった時、怒られたり大けがをするのはキミたちです。
 また、自転車は車なので、歩道を走ってはいけません。歩道を走るのは例外です。 「自転車および歩行者専用」の標識がある歩道は自転車も走れます。その時も歩行者が優先で、危なくない速さでゆっくりと行きましょう。 ベルをチャリンチャリン鳴らして歩行者をどかしたり、すぐ近くをすり抜けたりしてはいけません。
そして、一時停止の標識があるときは自転車も止まらなければいけません。 おまわりさんに見つかったり事故になった時、罰金を取られることになるかもしれません。 もちろん、スマホを使いながら自転車に乗っても罰金があります。
 当たり前のことですが、二人乗りはいけません。お話をしながら並んで走ることもいけません。夜間はライトを点灯しましょう。 これらのことができていないと、注意してくる人がいるかもしれません。不必要なトラブルを避けるためにも交通ルールを守るようにしましょう。
 それと、ちょっと知らない人が多いのではないかと感じる交通ルールもあります。 救急車や消防車やパトカーのような緊急車両がサイレンを鳴らして走っていた場合、緊急車両が優先されます。 止まって道を譲りましょう。その車両の行きつく先には重大なことが起きている可能性が高いです。 いくらキミたちの目の前の信号が青だったとしても渡るのはやめ、緊急車両に道を譲ってください。 でも、サイレンの音が聴こえてきても、どこから聞こえているのかわからないこともあります。 だから、その音が聞こえてきたら、徐行したり止まったりして、何が起きているのかを確認するようにしてください。
 ルールを知らないためなのか、サイレンを鳴らした緊急車両に突っ込んでいく子供もいますし、大人でもそういう人がいます。 目の前の命だけではなく、その緊急車両の先には誰かの命がかかっているかもしれません。


参考にした読み物:
『そうだったのか!自転車のルール』:藤沢市・藤沢市交通安全対策協議会・藤沢警察署・藤沢北警察署
『服装による見え方の違い』:群馬県警察  https://www.police.pref.gunma.jp/koutuubu/01kouki/jiko/douro/fukusou.html

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